魚の鱗を軟X線顕微鏡で測定しようとイシモチという魚の鱗を入手しました。 この鱗を保存していた水から取り出すと、平らだったものが丸まるように変形し、 エタノールで洗浄すると更に丸まってしまいました。 このような魚の鱗を変形させないよう(平たい状態を維持するよう)に脱水や脱脂を行う (真空装置に入れるまでの、大気中における前処理)方法がありましたら、 お教えいただけると幸いです。よろしくお願いいたします。
〇電子顕微鏡で生体材料などを観察する手法ですが、
イオン液体というもので置換する手法がございます。
〇軟X線顕微鏡とのことですが、X線吸収分光などの手法では、
カプトン(ポリイミド)テープなどで密閉して水分がある状態での測定することもあります。
その場合はカプトンだけのブランクを測定して差引きすればいいかと思います。
〇水とサンプルの比率にも依りますが、
グルタルアルデヒドを5~10%の濃度になるよう加えて、
そのまま一日以上放置することでサンプルが固定化され、
その後の乾燥と脱水の工程でも変質せず、そのままの形が保持されます。
専門書では、細かい濃度調整が記されておりますが、
実際には特に濃度に拘る必要はございません。
〇魚の鱗はコラーゲンを主成分とする繊維層とハイドロキシアパタイトなどの骨質層の2層構造のようです。
丸まってしまうのはこのコラーゲンが乾燥して収縮してしまうのかなと勝手に想像しました。
ホルムアルデヒド、グルタルアルデヒド、四酸化オスミウムなどによる化学固定、もしくは
エタノール、アセトン、ピクリン酸などによる物理固定などを試してみてはいかがでしょうか。
〇魚類のTEM試料は鱗を観察しているわけではないので完全に同じではないですが、
以下の前処理をしています。
前固定(2%パラホルムアルデヒド+2%グルタールアルデヒド in 0.1M PBS)
↓
(脱灰)
↓
(時間が空く場合は0.1M PBS中にて保存)
↓
後固定(1%四酸化オスミウムin 0.1M PBS)
↓
脱水(50%~無水エタノールの上昇系列)
脳などの脂肪分の多い試料の場合は脱水作業を長く取ったりするそうですが、
鱗はあまり脂を考慮する必要はない気がするので、上記の脱水操作で十分な気がします。